2012年11月11日日曜日

地下室の手記

地下室にいてもAmazonで買えるんだよ

ジッドをして、「ドストエフスキーの全作品を解く鍵」と言わしめた作品。
(ところでジッドって誰なんだろうか→アンドレ・ジッドさん)

『罪と罰』から『カラマーゾフの兄弟』に至るドストエフスキー5大作を、
沸騰したお湯にどばどば入れて一番出汁をとったような作品です。
ドストエフスキーらしさが異様なまでに凝縮されて読み進めるのも辛い程なのに、なぜか妙にすっきりと読める。
矛盾しているようですが、これが本作の素晴らしいところ。

ドストエフスキーというと、分厚い文庫本が1巻2巻3巻・・・というイメージがあり、
読破するには相当な根気と時間とキリスト教の知識が必要ですが、
本作にはそれらがあまり必要なく、気軽に手に取れます。
文庫本にして、スマホと同じかそれ以下の厚みしかありません。
持ち歩くのも苦にならない!

内容は、開口一番「僕は病んだ人間だ……」とのたまう小官吏(40才)の手記。
手記と言う割には、存在しているのかもわからない聞き手に食ってかかったり、
かと思えば回想に入ったまま戻ってこなかったり、
発言や考え方があまりにも自意識過剰だったりと、
読者はとにかく振り回されます。
当然、ひどく疲れますが、それこそがドストエフスキー作品を読む楽しさというもの(だと、個人的には思います)。

普通なら忘れてしまいたいような屈辱や、自己嫌悪や、あらゆる矛盾を
そこまでしなくてもいいのにというくらい丁寧に的確に描写しているので、
かつて少しでもそういった感情を抱いたことがある人なら、
五臓六腑がじくじくと痛むこと請け合いです。

短い割に「ドストエフスキー作品の人たちってだいたいこんな感じ」が凝縮されている作品なので、
大作に手を出す前の入門編としても、雰囲気がつかめて良いかもしれません。


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ドストエフスキー『地下室の手記』(1864)
新潮文庫 昭和44年

2012年11月10日土曜日

無花果とムーン

無花果とムーン

桜庭一樹氏の最新単行本です。

とてもかなしいのに、爽やか。
表紙の雰囲気とは裏腹に、晴れた日のすがすがしい景色が目に浮かんできます。
でもそれが更に、夜や彼岸の暗さを引き立ててもいます。

とにかくかなしい。なんかもうやりきれない。

でも、人の死というのは得てしてやりきれないものであり、
残された者は途方に暮れるしかなくて、
なんとかその人のいない現実を受け入れざるを得ないのだ、
ということを痛感しました。

死者が「心の中で生き続ける」なんてのはただの慰めで、
本当は、死んだらそれきり、それでおしまい。
どんなに相手を「えいえんに大好き」だとしても。



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桜庭一樹『無花果とムーン
角川書店 2012