2013年2月11日月曜日

世界から猫が消えたなら

世界から猫が消えたなら


恐ろしすぎるタイトルですね。
猫好きとしては、想像しただけで悲しい気持ちになります。

映画プロデューサー川村元気さん初の著作。
文学というよりはとっつきやすい哲学の入門書、といった感じ。
映画に携わっている方だからなのか、場面場面の情景がくっきりと整頓されて読みやすかったです。
小学校高学年とか中学生の読書感想文課題図書にでもなれそうな、明快でさわやかなお話でした。

人の命の重さはどのくらいなのか。
漠然と、それが特別重要なものだと思いがちだけれど、じゃあ実際「なくてもいいもの」と交換したらどうなるか?
もしも世界から猫が消えてしまったら?

命や存在が「ある」ということに、優劣や不等号をつけることについてのお話。


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川村元気『世界から猫が消えたなら』
マガジンハウス 2013



2013年2月3日日曜日

凍りのくじら

凍りのくじら (講談社文庫)
凍りのくじら (講談社文庫)

「あなたの描く光はどうしてそんなに強く美しいんでしょう」

ドラえもんの道具がたくさん出てくるのだけど、これはファンタジーでもなんでもない。
現実世界を泳いでいくために、一番大切な光のお話。

主人公・理帆子と一緒で、わたしもかつて、その光に照らしてもらったことがある。
これを読み終えたら、自分も誰かを照らしてあげたくなる。


その光に照らしてもらったら、
この先つらい出来事や嫌な気持ちになることがあっても、
大事なものを失うことになっても、
どこにいても、そこでちゃんと生きていける。



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辻村深月『凍りのくじら
講談社文庫 2008



abさんご

abさんご

全文よこ書きで,句読点があるはずのところはコンマとピリオドに.いわずとしれた,第148回芥川賞受賞作.
ひらがなの量がとてもおおくて,ほんらいかたかなであるべきところもひらがなで表記していたりするのだけれど,
そのわりには画数の多い漢字熟語を使っていたり.

そして本の裏表紙からは、縦書きで句読点と漢字を使用しているデビュー作を読むことができる。
つまりは、リバーシブル本。
こちらはタミエという少女にまつわる三篇の物語「毬」、「タミエの花」、「虹」。
社会性を拒否しているのか、そんな気はなく断絶されてしまっているのかは定かではないが、
邪気も無邪気もないところで、したたかなのに無力、あたたかいのに残虐性を持っている少女の話。

abさんご.
aでもbでもない,そしてどちらにせよ,いつかはきっと,なつかしくかなしくうつくしくなるせかいのこと.
ひらがなの効果もあって,なのだろうか,やわらかい春のひかりのような光景をかんじる.
そのいみを理解するすぴーどよりも速く,つぎつぎにことばがながれてくるので少しあせるけれど,
そのこと自体がしだいにここちよく,たのしくなってくるのでふしぎだった.
この物語のことばたちはきっと,晴れた日のきらきらひかる水面のようなものなので,
そのいみを捕まえることよりも流れをとめないことのほうが大切なのではないか,とおもった.
その中でわたしが捕まえられたことばはとても少ないかもしれないけれど,
どれも白魚のようにいきいきとうつくしく,音読していなくてもなぜか耳にのこる.
かたちだけを真似てこの感想ぶんをかこうとしても,とてもむつかしいので,このあたりで.


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黒田夏子『abさんご
文藝春秋 2013