2013年2月3日日曜日

abさんご

abさんご

全文よこ書きで,句読点があるはずのところはコンマとピリオドに.いわずとしれた,第148回芥川賞受賞作.
ひらがなの量がとてもおおくて,ほんらいかたかなであるべきところもひらがなで表記していたりするのだけれど,
そのわりには画数の多い漢字熟語を使っていたり.

そして本の裏表紙からは、縦書きで句読点と漢字を使用しているデビュー作を読むことができる。
つまりは、リバーシブル本。
こちらはタミエという少女にまつわる三篇の物語「毬」、「タミエの花」、「虹」。
社会性を拒否しているのか、そんな気はなく断絶されてしまっているのかは定かではないが、
邪気も無邪気もないところで、したたかなのに無力、あたたかいのに残虐性を持っている少女の話。

abさんご.
aでもbでもない,そしてどちらにせよ,いつかはきっと,なつかしくかなしくうつくしくなるせかいのこと.
ひらがなの効果もあって,なのだろうか,やわらかい春のひかりのような光景をかんじる.
そのいみを理解するすぴーどよりも速く,つぎつぎにことばがながれてくるので少しあせるけれど,
そのこと自体がしだいにここちよく,たのしくなってくるのでふしぎだった.
この物語のことばたちはきっと,晴れた日のきらきらひかる水面のようなものなので,
そのいみを捕まえることよりも流れをとめないことのほうが大切なのではないか,とおもった.
その中でわたしが捕まえられたことばはとても少ないかもしれないけれど,
どれも白魚のようにいきいきとうつくしく,音読していなくてもなぜか耳にのこる.
かたちだけを真似てこの感想ぶんをかこうとしても,とてもむつかしいので,このあたりで.


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黒田夏子『abさんご
文藝春秋 2013



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